2015年08月14日

第32講 右脳と未来予知(1)

未来予知や予言への関心が高まっている

 3.11の大震災、世界経済の衰退等、社会不安が高まっている。自然災害や原発等、人知や科学を超えた問題に対する先行きの不安も大きい。震災を契機に特権階級(政治家・マスコミ・科学者)の無能さ・無責任さも明らかとなり、これまでの科学信仰の価値観も崩れ、頼りを失った多くの人々は新たな拠り所を模索している(1)

 こうした状況を背景に、従来ならば「トンデモ」と見なされてきた予知や予言への関心が高まっている(1)。例えば、松原照子氏は、幼少の頃から不思議の世界の人々と出会い、その人たちが話したことをブログに紹介してきたが、東日本大震災を自分のブログで予言したことで注目を集めた。全米No1の超能力者と言われるロン・バード氏も、9.11テロや3.11東日本大震災を予言したことで着目されている(3)。これらを手がかりに、人々は新たな社会や新しい人間関係のあり方を模索し始めている(1)

修行によって後天的な予言者となるシャーマンたち

 幼少期から不思議の世界の人々と会ったり、目に見えないものが見える松原氏や子どもの頃から透視能力を持っていたロン・バード氏は、「先天的予言者」と言える(3)

 一方、厳しい修行期間を体験することで覚醒していく後天的予言者もいる。その代表がシャーマンである。シャーマンは世界各地域に事例が見られ、その歴史は長い(3)。「シャーマン」の語源は、シベリアのツングース族の「エヴェンキ語」に由来し、「暗がりの中で見える人」「知識と知恵のある人」との意味を持つ。沖縄本島や周辺離島、奄美諸島等に古来から存在する民間の祈祷師「ユタ」も伝統的なシャーマンである。神とつながる霊的な資質、霊能力を持ち、沖縄の言葉では「カミンチュ(神の人)」と称されている。また、メキシコ中南部やグァテマラの山岳地帯には、幻覚キノコ、「シロシベ」を宗教儀式や民間医療に使うシャーマン(クランデーロ・呪術医)がいまも活動している。クランデーロは、自ら採取したキノコを生で食べ、静かに歌を唄ったり、祈りを捧げながら、相談者と一緒に食べ、自分と他者との境界をあいまいとし、言葉を使わなくても相談者の心がわかるようになり、深い所で心を共有することで、隠されていた病気の原因をつきとめ、治療を促す(2)

 いずれも、自分以外の存在からお告げを受けたり、知恵を借りて悩み相談やカウンセリングをしている点は共通する。けれども、後天的な予言者であるシャーマンは苦しい修行期間を経て、シャーマンへと覚醒していく(3)。例えば、多くのユタは、「カンダーリィ(神ダーリィ)」と呼ばれる「巫病」を体験する。「巫病」とは、熱にうなされたり、寝込んだり、錯乱状態になる等の精神疾患状態を一定期間体験することである。これはユタとなるための通過儀礼で、この期間を経た後に霊能力が覚醒し、ユタとしての準備が整うとされている。厳しい修行期間を経て覚醒していく意味では、青森のイタコも同様である(2)

 また、シャーマンには、生まれた時から予言能力を有している先天的能力者もいるが、たいがいのシャーマンは、普通の状態で情報が得られる先天的予言者とは異なり、歌や踊りよってトランス状態になることで守護神霊やあの世の世界とつながり、神様やご先祖様のお告げを受けている(3)

精霊の予言とシャーマン誕生

 未開部族のシャーマンは、日常的な悩み相談から祭祀の長を担い、今も最も重要な役割を果たしている。古代には王と祭祀長は分化したが、それ以前の原始人類では、祭祀を司る長はシャーマンそのものだった。人類誕生が誕生した約500万年前から弓矢が発明される2〜1万年前までは、人類は常時極度な怯えや飢えに苦しめられていた。

 こうした中で人々が必要としていたのは、徐々にトランス状態となり「精霊」を見て「安心」を得ることであった。人類が目にしたこの「精霊」こそ、人類最初の観念となった。そして、精霊を見るためには、最も霊感能力の高い者、一般的には女性が集団のリーダーになったはずである(4)

国家の誕生とシャーマンの衰退

 けれども、約2〜1万年前の弓矢の発明によって人類は外敵と互角以上に闘えるようになる。そして、観念機能を活かした戦闘具や農業・飼育を通じて、洞窟を出て地上で繁殖していく。戦争圧力が高まれば、戦闘集団の長である男性が部族長となり、戦争の果てに古代初期に王国が誕生すれば、その武装勢力を率いてきた部族長が王となっていく。こうして、元々は祭祀長が部族長であったのが、戦闘隊長が部族長へと昇格し、その下や横並びに祭祀長(シャーマン)が控えるという形に逆転した。この状況は、とりわけ、西洋で顕著だった。古代国家から中世にかけて武力戦争の皆殺しにより、共同体が完全に解体され、国家をまとめるための観念(宗教)が構築され、大衆まで浸透していったからである。一方、東洋では村落共同体が残り続け、同様にそうした共同体では、シャーマンの祭祀や予言・予知によって集団が保たれ続けた(4)

【引用文献】

posted by la semilla de la fortuna at 20:00| Comment(0) | 脳と神経科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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