2015年09月04日

第45講 人生の目的を探る(10) ペテンのダスカロス本

 「TeruSun」氏のブログ、「スピリチュアルラボ: 今を精一杯に生きること」が非常に参考になるのは、ペテンにだまされないように注意してくれているからである。そこで、自分の反省も含めて、これを再編集してみた。

神智学運動に誘われたが、これを蹴ったダスカロス

 ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー(Helena Petrovna Blavatsky, 1831〜1891年)の神智学用語とダスカロスの使用用語は似ている。ブラヴァツキーが「エレメンタリー」と表現するものと、ダスカロスが「エレメンタル」と表現するものとは同じものを指している。そして、死後の世界観も似ている。けれども、混同してしまうのは頂けない。ブラヴァツキーのオカルト体系の師はイギリスで師事したマックス・テオンだとされている。ブラヴァツキーの「神智学」とテオンが主宰した「ルクソールのヘルメス同胞団(The Hermetic Brotherhood Of Luxor)」の「宇宙哲学」や紋章は類似している(11)

 神智学者たちは、ダスカロスが30歳の時、1942年に同志として引き込もうとした。けれども、当時の神智学協会には、優れた霊的能力を持った人物がいなかった。学者ではキリストを視ることができない。ダスカロスは、神智学者たちがキリストを視れないことに失望し、神智学運動(Theosophical movement)への興味を失った(11)。要するに、ダスカロスは、神智学協会とは何の関係もないし彼自身も神智学協会に全くといって関係していない(20)

 ブラヴァツキーとルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861〜1925年)も異なる道を歩んだし、神智学協会とダスカロスが遺した教えを探究するサークルも別物である(11)

ホワイトブラザーズとは無関係のダスカロス

 ダスカロスは、チャネリングを否定していない。ダスカロス自身が、聖ヨハネの霊媒で(12)、宿命的なガイド(守護霊・産土神)が聖ヨハネであったからこそ、ダスカロスの驚異的なヒーリングも行いえた(10)

 けれども、ダスカロスは、「アセンデッド・マスターズ」という概念を作り出したカルト集団、ホワイト・ブラザーフッド[白色同胞団]やニューエイジ・ムーヴメントのチャネリングとは何の関係もない(20,21)。逆にチャネリングや降霊ついては全面的に注意を与えていた(20)

マルキデス教授のシリーズは作り話

 45Markides.jpgこうしたカルト集団は危険なのだが、「ホワイト・ブラザーフッド」と「ダスカロス」とを著作「メッセンジャー」でつなげたのは、米国メイン大学社会学のキリアコス・マルキデス(Kyriacos C. Markides)教授である。そこで、マルキデス氏には問題があるし、このことでダスカロスは、マルキデス教授と決別をしたのではないだろうか(21)

 また、マルキデス教授の書いた『メッセンジャー・永遠の炎』では、ダスカロスが話した言葉として「預言がない」と語られている(12,24)。けれども、日本では預言者(巫女)が何年も前に預言したことが現実化した事例がかなりある。ダスカロスが大切にしていた聖書の教えも、数々の預言者の預言が述べられている書物である。ダスカロスはイエスの教えを大切にしていたのだから、預言者イエスを大切にしているはずである(12)。ユダヤ教、キリスト教、イスラームの源泉になっている「旧約聖書」は預言者によって成り立っているので、ダスカロスがそのようなことを言うはずがない(24)

 TeruSun氏はマルキデス博士が書いた「メッセンジャー」シリーズの事実関係を見極めるため、様々な視点でマルキデス博士や彼と親しい真理の探究者の一人であったコスタス氏(キキス・クリストフィデス氏(Kikis Christofides))のことを調べてみた。その結果、ルポとして書かれた「メッセンジャー」の内容は、マルキデス教授によるフィクションが混入された疑惑本で、英米独での出版差し止め措置がされたことが妥当であることがわかった(26)

インテリほどペテンにだまされる

 このことから、TeruSun氏は「したがって、メッセンジャーの2巻、3巻を全面的に褒める方がいたら少し距離をおくことを薦めたい。なぜなら、虚構と現実の精査弁別ができていない人だからだ。日本にはこのタイプの方が、とりわけ、インテリに多い。知的な人間ほど騙されやすいのである」と警鐘する。

45kikis christofides.jpg ただ、キキス・クリストフィデス氏がダスカロスの下で20年以上も教えを受けたことは真実である。そして、クリストフィデス氏の独り立ちを師であるダスカロスも喜んでいた。けれどもマルキデス教授が用意した「エレヴナ(Erevna)」と呼ばれているサークルの導師として独り立ちしてからは、師ダスカロスと完全に決別する。

「ピラミットは重力を自由に制御できる聖者達が、巨石を宙に浮かせ積み上げた建造物である」といったことを話す覚醒者のもとで「キリストのヨーガ」を語るような人を信奉する人たちも、クリストフィデス氏のサークルとつながりがある。「エレヴナ」は、ある意味、神智学協会と同じようなイメージかもしれない(26)

ダスカロスはキプロス正教会から中傷されていた

 キプロス正教会とは違う道を歩んできたため、正教会からの中傷は頻繁に起こっていた(24)。ダスカロスは、キプロス正教会の教父たちから中傷されても、微笑んで「彼らは善い人たちであって、悪意はない」と言っていたが(25)、最後までキプロス正教会とは一線をひいていた。伝統宗教のなかに「真理は見い出しづらい」と感じていたのかもしれない(26)。正教会側もやっとのことで埋葬地の許可が下りたほど生前も死後もダスカロスを拒んでいた(24)

 逆にキキス・クリストフィデス氏は正教会を重要視している。そして、マルキデス教授とクリストフィデス氏は年齢も近く親しい仲だった。そこで、マルキデス教授は、その創作の源泉をクリストフィデス氏にも密かに求めたのかもしれない(24)。そして、マルキデス教授は「メッセンジャー」シリーズ2、3巻を書き上げる(26)

 マルキデス教授もキプロスでは有名人となっており、クリストフィデス氏とともに既に違う道を歩んでおり、元の師であるダスカロスの名前を出すことすら嫌悪するらしい(26)

ダスカロスは創作に懸念して自著を5冊も書いた?

 取材を承諾したのは過去世の縁だといわれるが、出版されたものをダスカロスが読んだ時「馬鹿な… 私はこんなことを言ったことはない…」と愕然と共に残念な気持ちになったのではあるまいか。あのまま何も遺さなかったら創作が一人歩きし「聖書」のようなものになってしまったと恐れ、その後に自著を5冊遺したのも、マルキデス教授の創作をできるだけ避けることを目的としているのであろう(24)

 ダスカロスが伝えた「エソテリック・ティーチング」とは、恐らく彼自身の魂(SPIRIT)〈意識〉の集大成を書き残したのであろう。トルストイの『人生論』『人はなんで生きるか』に近いかもしれない。そこで、浮き足立った理論は書かれていない。人は、どう生きたら良いのか。ダスカロスも真理の探究者の一人であった(12)

ダスカロスは「ワンネス」という単語を使っていない

 英語版の「Esoteric Teachings」では「ワンネス」という単語は使われていない。けれども、邦訳版『エソテリック・ティーチング』では「第3章 聖霊」で「ワンネス」という単語が使われている(18)

 では、なぜ「ワンネス」が危険なのか。「ワンネス」という単語を使い「ワンネスこそ悟り」「ワンネス、苦からの解放が悟り」「この世は幻想の世界、この世に意味はない」とする教義を持つ、インド系のニューエイジ団体の日本人代表者の著書等が存在することに一抹の不安を感じるからである(18)。彼らは、インド人マスター、カルキ・バガヴァンを聖者と仰ぎ、その運動を「ゴールデンエイジ・ムーブメント」と称している(18,28)

 ブラヴァツキーやシュタイナーの近代神智学運動もインドやヒマラヤ、チベットと結びつき迷妄(ニューエイジ)を産み出した。神智学協会に見い出された「東方の星の会(Order of the Star in the East)」元教祖クリシュナムルティは、教団を解散し、近代神智学、マイトレーヤ到来説等を否定して歩き回った(18)

 日本人は何でも混ぜこぜが「最高!」だと思うような軽いアタマの人たちが多いかもしれないが、シャーマニズムのネイティブ・アメリカンですら、それらニューエイジ的霊性融合こそ俗悪なものだとしている(18)

スピリチュアル詐欺にあわないために本物を知ろう

 国内外ではニューエイジ、スピリチュアル(ワンネス、アセンション、自己啓発、真我)の詐欺が横行している。スピリチュアル詐欺に遭わないためにも「本物」を一人知るだけでも防御になる。スピリチュアルとは世界を広く見つめ、視野狭窄に陥ることを防ぎ、人生にスピリチュアルな視点を取り入れて精一杯生きることなのである(28)

【引用文献】
(10) 2008年8月30日「《20世紀最高のヒーラー》の悲劇」スピリチュアルラボ
(11)2008年10月2日「ダスカロスがみた神智学」スピリチュアルラボ
(12) 2008年10月18日「【重要】〈ダスカロス〉は学ぶものではない」スピリチュアルラボ
(18)2008年11月4日「「ワンネス」には注意!」スピリチュアルラボ
(20)2008年11月16日 「ダスカロスの名誉のために」スピリチュアルラボ
(21) 2008年12月10日「〈ホワイト・ブラザーフッド〉と〈ダスカロス〉」スピリチュアルラボ
(24)2009年2月10日「〈ダスカロス〉と〈コスタス〉」スピリチュアルラボ
(25)2009年7月14日「ダスカロス〈批判中傷された時の態度〉」スピリチュアルラボ
(26)2009年7月15 日「ダスカロスとコスタス、マルキデスの関係まとめ」スピリチュアルラボ
(28)2011年7月16日「20世紀最後の〈霊的賢人〉」スピリチュアルラボ

マルキデス教授の画像はこのサイトから
キキス氏の画像はこのサイトから

posted by la semilla de la fortuna at 18:00| Comment(0) | 魂の人生論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: